100年の歴史のなかで、鳴尾ゴルフ倶楽部が守り続けてきたものの一つに“クラブの自主運営”がある。設立当初から、一人ひとりの社員(メンバー)が議決権をもち、運営にも携わっており、メンバーから選ばれた委員会がクラブを運営してきた。創立以前の黎明期(横屋ゴルフ・アソシエーション、鳴尾ゴルフ・アソシエーション)から継承し、長きにわたり育んできた独自の運営と、自主運営だからこそ保たれてきたクラブライフのいくつかを紹介しよう。
“鳴尾の宝”運営委員会
英国のクラブ組織のコミッティーを原点とする「委員会」は日本の多くのゴルフクラブで採用されている制度だが、鳴尾ゴルフ倶楽部の運営委員会ほどの歴史を持つクラブは数少ない。時代を遡れば、1924年に浜コース18ホールの拡張に携わった西村貫一、J.E.クレーンがグリーンコミッティー(グリーン委員)として躍動し、1929年には猪名川コース創設に向け、建設委員として14名の社員が中心となり、建設、開場までの役割を担った。
「運営委員会は、1935(昭和10)年から続く“鳴尾の宝”。理事長をはじめ、四役、理事会だけでなく、社員自らがクラブを運営している。付き合いでやるというレベルでは、ここまでできない。ゴルフが本当に好きな人の集まりだからこそ、ここまでできる」(服部盛隆前理事長)
日本のスポーツの発展、普及に大きな貢献をもたらした神戸外国人居留地の欧米人による組織「KR&AC」が、鳴尾の源流、横屋ゴルフ・アソシエーションの創立に大きなかかわりを持ち、英国の「スポーツマンシップ=ジェントルマンシップ」を伝えたことは第1章で詳述したが、この「ジェントルマンシップ」が鳴尾の運営委員会の原点となっていることを忘れてはならない。
つまり、メンバーが自ら委員会をつくり自らの手でクラブを運営することで、組織を学び、自己犠牲や道徳の精神を身に着けることで自らの成長を促すことが、「ジェントルマンシップ」を原点とした英国のスポーツクラブの本質なのである。
現在の委員会は、バー・メス、キャディ、競技、フェローシップ、財務、グリーン、ハンディキャップ、ハウス、公益、広報の10の組織に分かれており、2020年度は、40歳から75歳の幅広い年代の委員が、役割を分担してクラブの運営を担っている。また、キャプテン、常務理事、財務理事が各委員会の管掌を持ち、組織的な活動が行われている。
各委員会が作成した「運営プラン」は、3月の「運営委員総会」で報告され活動がスタートし、9月の「運営委員総会」では経過報告が行われる。運営委員会は、クラブの課題に関して各委員会で検討を重ね、それぞれに最適なプランを考え、理事会の承認のもとで課題をクリアし、運営を行う。